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Mysteria / VIOLET
失恋船長 ★★★ (2025-07-09 08:45:10)
アルバムジャケットに映るメンバー、リードヴォーカルである女性のメイクと、なんだかとても古くさい印象を受けた。なんの予備知識も無いバンド。ドイツのグループらしいが詳細はさっぱりだ。Houstonを聴いていた時、Houstonが好きな人にオススメという形で紹介されたバンドの中に、このグループがいた。その古くさい印象のメンバーショットに魅入られた。これは幻のグループ発掘良品なのかと、3曲目を聴いているあたりでワクワクしていたのだが、このグループは現役の新人。

2022年には1stをリリースと、絶賛売り出し中なのだが、古くさい音楽をやっている。軽やかに流れる叙情的なメロディ、浮遊感も漂わせるヴォーカル。そして随所にねじ込まれるサックスの音色、このサックスがイイ。AORなハードサウンドではあるのだが、湿ったヨーロピアン調の音色、そして大衆性を完備した聴きやすいサウンド、その鍵を握るのはキーボードだし、サックスだ。
ギターは控えめながら邪魔しないソロなど、アイデアを持っている。この手のサウンドにおいてリズムセクションは大きな役割を果たさないのだが、逆にシンプルに徹する事でより音楽性を際立たせる、まぁ狙ってやっているのだから驚きはない。

この独特の浮遊感のあるメロディと歌声、どこかで聴いた事があるなぁと悩むのだが中々出てこないのだが、個人的にはRoxetteを思い出しますね。彼女の声質がマリー・フレデリクソンに似ているなぁと思うと、全てのピースがハマりましたね。

彼等が示した神秘性、その繊細な機微を見逃さないアレンジとメロディ、歌い手もパフォーマンスもより狙い済ました世界観をターゲットに、見事に撃ち抜いています。上手いことやっているわ。

過去が未来を作る。これはワタクシの持論です。過去を見つめ、そこから得た教訓が未来を作る、この80年代型サウンドは今や一つのジャンルだ。ノスタルジックなサウンドの中に今の感性を取り込み昇華したスタイルはけして盗用するだけの罪作りなサウンドではない。ワタクシが経験したことがないスタジアムロック、このバンドはその会場に参加したような錯覚を覚えさせてくれる。

80年代のロックには大きな問題があった、それはお金儲けに走りすぎたレコード会社、マネージャーと結託する弁護士。そういう集金作業に加担させられ搾取されたバンドは数知れず、そうして方向性を見失いシーンそのものが消えた。
しかし、こうして再提示された音楽、その純粋なリメイクは改めて80年代型のサウンドの素晴らしさを現在に伝えてくれた。このバンドの人気は分からんが、ノスタルジックな印象操作にワタクシは見事に乗せられた。

根がスラッシュメタルから入った身としては、どうしても軽いなぁ。軟弱だなぁ。TOTOやStarshipの全てが好きな分けでもないし大きな影響を受けた分けではない、またRoxetteとかは、まともに聴いた事が無い。それだけに、このバンドがもの凄いパクりをやっても気がつかないのだが、それでも、ノスタルジーなサウンドには魅入られる場面は少なくない。

ただ、やはり飽きのサイクルは早いだろう。デジャブ感というものはあるのだが、バラードとかもアリーナが似合う音なんだよなぁ。このバンドのバイオは手に入れないとねぇ。その面倒な作業が苦にならない、古くて新しい前時代的スタイルに魅了されました。ダレそうになったんだが10曲入のおかげでリピード中なんですよねぇ。

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